Interview
大崎 清夏(詩人)

※画像:2019年、六本木AXISギャラリーでのディスカッションイベントにて(撮影:金川晋吾)

 

残念ながら5月24日(日)に中部公民館・プラネタリウムで詩をつくるワークショップ「星空ポエムをつくろう」と名作に触れる朗読会「プラネタリウムの朗読会」は中止になってしまいました。ワークショップの講師と朗読会の出演をお願いしていた詩人・大崎清夏(おおさき さやか)さんに、詩を書くようになったきっかけや言葉の魅力、そしておすすめの詩集をお伺いしました。

詩作は好きな言葉やおもしろい言葉をみつけるところから

- 大崎さんが詩を書き始めたきっかけを教えてください。
子どもの頃、母が絵本や童話をたくさん買ってくれて、自然と本の世界にのめりこむようになりました。そのなかに詩集もありました。中学生の頃から詩のようなものを書いていましたが、大学生の時は小説家を目指していました。卒業後、伊藤比呂美さんという詩人の詩に出会って感動したことがきっかけで、本気で詩を書くようになりました。

 

- 大崎さんはどのように詩を作っているのでしょうか。
言葉は、いたるところにあります。本やテレビの中、誰かの話し声、駅の広告、手紙の中、夢の中……。好きな言葉やおもしろい言葉を見つけるところから、詩作がはじまります。私は好きな言葉やおもしろい言葉を、歩いている時に見つけることが多いです。それらの言葉を忘れないようにメモしておいて、後で詩のかたちに整えます。さまざまな国や時代の本を読むと、遠い場所、遠い時間からも好きな言葉が見つかります。本で読んだ言葉を自分の中に持っていると、詩が豊かになります。

 

- 俳句や短歌とちがって書き方にルールがない詩ですが、どういったものが「詩になっている」と思われるのでしょうか。
俳句や短歌もそうですが、詩は、意見や主張とは別の種類の言葉です。どんな言葉も、詩になる可能性があります。読者が、その詩によって慰められたり、楽しくなったり、感動したり……ともかく、心をゆっさゆっさと揺さぶられるとき、詩は読者のものになります。詩が読者のものになるとき、詩は詩になります(そして、詩の最初の読者は、詩の書き手なのです)。

大変な戦いに疲れたとき、本の世界に逃げこめばいいと知ることも、とても大事なこと

- 詩や言葉には、どのような魅力やちからがあるとお考えですか?
残念ながら、言葉はよく人を傷つけます。でも、その傷を言葉が治癒してくれることもしばしばあります。人の心をじわっと温めたり、笑わせたりもします。自分の考えをことばにして書いていくと、わからないことや嫌いなこととも向き合えることがあります。たとえば、あなたがピーマンを大嫌いだとします。もしかしたらあなたには、ピーマンが大好きな人より優れたピーマンの詩が書けるかもしれません。ピーマンの詩を書くと、ふしぎとピーマンに愛着がわくかもしれません。

 

- これまでも子どもを対象とした詩のワークショップを行っていらっしゃいますが、子どもが作る詩について印象的なこと(大人が作る詩との違いや、発見など)があれば教えてください。
大人になると、ごまかすことが上手になります。まだそれができない子どもたちは、良くも悪くも、日々ごまかしのきかない言葉の世界で勝負しています。それはひりひりするような大変な戦いである一方、大人には書けない鋭い詩のことばとして表されることが往々にしてあると感じます。自分が子どもだった時のことを思い返すと、大変な戦いに疲れたとき、本の世界に逃げこめばいいと知ることも、とても大事なことだと感じます。

 

 


◆◆◆ おすすめ詩集 ◆◆◆

詩をつくるワークショップの参加者である小学4年生~6年生のみなさんにおすすめしたい詩集を大崎さんに教えていただいていました。また、小牧市内の図書館で大崎さんによる星空にちなんだ詩集の選書コーナーを設ける予定でした。それらのラインナップを併せてご紹介します。

 

【小学4年生~6年生におすすめの詩集】

●詩を初めて読む人に:『みみをすます』谷川俊太郎著(福音館書店)
●動物を愛する人、言葉の不思議さに惹かれている人に:『世界はまるい』ガートルード・スタイン著、みつじまちこ訳(アノニマ・スタジオ)
●動物を愛する人、夜明けや夕闇を美しいと感じる人に:『プラテーロとわたし』J.R.ヒメネス著、伊藤武好・伊藤百合子訳(理論社)

≪大崎さんより≫

「自分の日本語をもっと育てたい人には、中原中也、宮沢賢治、井伏鱒二、萩原朔太郎……図書室でぱらぱらっとめくってみて、自分と相性の良さそうな人の詩集から読むといいですよ。」

 

【えほん図書館で紹介予定だった詩集(対象年齢:小学生低学年以下)】

星が光って、みんなは眠る。
それから真夜中、それから夜明け…
夜の世界を覗いてみよう

 

「星座を見つけよう」H.A.レイ著(福音館)
「パパ、お月さまとって!」エリック・カール著(偕成社)
「双子の星(宮沢賢治絵童話集5)」宮沢賢治著(くもん出版)
「ペンギンハウスのメリークリスマス」斉藤洋著(講談社)
「トムは真夜中の庭で」フィリパ・ピアス著(岩波少年文庫)
「まよなかのだいどころ」センダック著(冨山房)
「しずかなおはなし」マルシャーク著(福音館)
「よあけ」ユリー・シュルヴィッツ著(福音館)
※番外編「宇宙」かこさとし著(福音館)

【小牧市立図書館で紹介予定だった詩集】

●はじめて詩を読む人のための古今東西・詩集入門

 

「ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集」斉藤倫著(福音館)
「プラテーロとわたし」ヒメネス著(理論社)
「アメリカ・インディアンの口承詩」金関寿夫著(平凡社)
「草の葉 初版」W.ホイットマン/富山英俊著(みすず書房)
「終わりと始まり」シンボルスカ著(未知谷)
「井伏鱒二全詩集」井伏鱒二著(岩波書店)
「ココペリの足あと」ななおさかき著(思潮社)
「名井島」時里二郎著(思潮社)
「わたしの日付変更線」ジェフェリー・アングルス著(思潮社)
「死んでしまう系のぼくらに」最果タヒ著(リトルモア)

公演日時 2020年5月24日(日)
その他
ご案内
新型コロナウイルスの影響により、令和2年5月24日(日)に開催を予定しておりました「プラネタリウムの朗読会」、ワークショップ「星空ポエムをつくろう」は中止となりました。

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